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Avidのフラッグシップ・ライブ・コンソール、VENUE | S6Lシステム。昨年末の出荷開始以来、世界中の名だたるPAカンパニーに続々と導入され、著名なアーティストのコンサート・ツアーで活躍しています。群雄割拠とも言える大規模〜中規模ライブ・コンソール市場にあって、VENUE | S6Lシステムの一体どの部分が評価されているのか、先頃来日したAvid本社のライブ・サウンド製品担当シニア・スペシャリスト、ロバート・スコヴィル(Robert Scovill)氏に話を伺いました。スコヴィル氏は単なるプロダクト・スペシャリストではなく、製品開発にも深く関わるAvidライブ・サウンド製品のキー・パーソンの一人です。

Avid - Robert Scovill

北米のPAカンパニーの間では、従来のVENUEコンソールとの互換性の高さが評価されている

——— Avidの新世代ライブ・ミキシング・システムのフラッグシップ・モデル、VENUE | S6Lシステムの出荷が開始されて約半年が経ちます。セールスの手応えはいかがですか?

RS VENUEの新しいフラッグシップ・モデルへの期待はもの凄く高かったので、世界中からかなり引き合いはあると予想していたのですが、正直その反応は我々の想像を遥かに上回っています。Avidのライブ・サウンド製品史上、最高のセールスを記録しており、イニシャル販売台数はVENUE | D-ShowシステムやVENUE | Profileシステムを大きく上回っています。具体的には半年足らずで、500システム以上納入しました。ここでは名前を挙げませんが、北米やラテン・アメリカの代表的なPAカンパニーには、ほとんど導入していただいたのではないでしょうか。そういった会社に導入していただくと、自動的に著名なアーティストのコンサート・ツアーでも使われることになります(笑)。現在もブラック・サバスやデュラン・デュランのワールド・ツアーで、VENUE | S6Lシステムは世界各国を飛び回っているはずです。

——— そういったPAカンパニーは、VENUE | S6Lシステムのどの部分を評価して導入を決めたのでしょうか。

RS 音質や操作性など、評価のポイントは導入業者によって様々です。ただ、多くの会社がVENUE | D-ShowシステムやVENUE | Profileシステムとの互換性、つまりVENUE SoftwareのShowファイルの互換性が維持されている点を高く評価していますね。PAカンパニーの中には、VENUE | S6Lシステムのデモンストレーション・ツアーに普段仕事で使用しているShowファイルを持参し、その場で読み込んだところ問題なく音が出たので導入を決めたという会社もあります(笑)。

——— やはりVENUE | S6Lシステムを導入した会社は、既にVENUE | D-ShowシステムやVENUE | Profileシステムを運用しているところが多いのでしょうか。

RS もちろんそういう会社は多いですが、これまでVENUEコンソールを導入していなかった新規のPAカンパニーも少なくありません。またVENUEを運用していた会社も、更新用にVENUE | S6Lシステムを導入するのではなく、追加で導入するケースがほとんどですね。VENUE | D-ShowシステムやVENUE | Profileシステムは依然としてパワフルなコンソールですから、まだまだ現役で使用したいようです。

——— VENUE | S6Lシステムには、フェーダー数やタッチ・スクリーンの数が異なる3種類のコンフィギュレーションが用意されています。どのコンフィギュレーションが最も人気がありますか?

RS 旧VENUEコンソールもそうだったんですが、国や地域によって人気のコンフィギュレーションは違うんです。北米ではこれまでVENUE | D-Showシステムが一番人気だったんですが、VENUE | S6Lシステムになってもその傾向は変わらず、最も大きなS6L-32Dというコンフィギュレーション(32+2フェーダー/タッチ・スクリーン4面)が一番人気があります。一方、ヨーロッパではVENUE | Profileシステムのようなコンパクトなコンソールが好まれるため、VENUE | S6LシステムでもS6L-24Dというコンフィギュレーション(24+2フェーダー/タッチ・スクリーン3面)が人気がありますね。これは日本でも同じ傾向です。

——— 業務用音響機器のメーカーはここ数年、ライブ・コンソールにかなり力を入れています。新製品も続々登場していますが、その中にあってVENUE | S6Lシステムの強みというと?

RS 私は2つあると考えています。まず1つはコスト・パフォーマンスの高さ。VENUE | S6Lシステムが基盤としているテクノロジーは最先端のもので、またコンポーネントも非常に高価なものを使用しています。マイク・プリアンプはVENUE | S6Lシステムのためにゼロから開発したものであり、搭載しているDSPも非常に強力です。最近のライブ・コンソールはタッチ・スクリーンが当たり前になっていますが、VENUE | S6Lでは最高品質のコンポーネントを採用しており、その操作感は快適の一言です。そのクオリティを考えれば、VENUE | S6Lのコスト・パフォーマンスは非常に高いと言っていいのではないでしょうか。メーカー各社が切磋琢磨した結果、この種の製品はどれも似たような仕様/機能になってしまうのですが、各部位のクオリティをじっくり比較してください。その差は歴然としていると思います。

あとは先ほども言いましたが、VENUE SoftwareのShowファイルの互換性ですね。VENUE | D-ShowシステムやVENUE | Profileシステムは、世界中のコンサートSRの現場で標準的に使用されているコンソールです。それらで使用しているShowファイルを、VENUE | S6Lシステムならばそのまま読み込むことができるのです。つまりセッティングを維持したまま、より優れた音質と機能を手にいれられるというわけで、これは既存のVENUEユーザーにとって大きな魅力なのではないでしょうか。レコーディング/プロダクションの世界では、Pro Toolsのセッション・ファイルが標準となっており、世界中どのスタジオに行っても作業を継続することができます。それと同じような利便性を、我々はライブ・サウンドの世界でも実現しているのです。私が知っているPAカンパニーの中には、ワールド・ツアーのブレイク中に、FOHコンソールをVENUE | ProfileシステムからVENUE | S6Lシステムに入れ替えてしまったところもあります(笑)。

——— 長年ライブ・サウンド関連の仕事に従事しているスコヴィルさんが個人的に気に入っている機能というと?

RS フェーダーのユーザー・レイアウト機能ですね。VENUE | S6Lシステムでは、S6L-32Dなら最大32チャンネル、S6L-24D/S6L-24なら最大24チャンネルの範囲で自由にフェーダーを並び替えて、ユーザー・レイアウトとして保存/呼び出すことができます。並び替えられるチャンネルの種類に制限はありません。VENUE | S6Lシステムのユーザー・レイアウト機能が便利なのは、スナップショット機能と連動している点です。つまりスナップショットを呼び出すだけで、ユーザー・レイアウトも自動的に切り替わるんです。これは現場ではとても便利な機能ですよ。

Waves製プラグインは近い将来、SoundGridで対応予定

——— VENUEコンソールは、VENUE Softwareのアップデートによって機能が追加される点も高く評価されています。今後のVENUE Softwareのアップデート予定についておしえてください。

RS 我々がVENUE | S6Lシステムの導入業者に対して心苦しく感じているのは、発表時にアナウンスしていた機能がまだすべて実装できていないことです。それらの機能はVENUE Softwareのアップデートで随時実装していく予定ですので、いましばらくお待ちください。

間もなくリリース予定のv5.2(註:2016年6月末にリリースされました)では、ユーザーにリクエストされていた多くの機能が搭載されます。まず、複数システム間でI/Oラックを共有することが可能になりました。具体的には2台のE6Lで、最大3台のStage 64を共有することが可能になり、これによりFOHとモニターの両方でVENUE | S6Lシステムを使用するような大規模なライブ・サウンド・システムが実現します。I/Oラックを複数のコンソールで共有する場合、課題となるのがインプット・ゲインの調整ですが、VENUE | S6Lシステムは独自の“True Gain”テクノロジーによって、常に適正レベルが維持される仕組みになっています。

Avid - Robert Scovill

またこのバージョンから、Stage 64用の新しいオプション・カード、DNT-192に対応します。DNT-192は、16chのDanteカードで、これによってVENUE | S6LシステムにDante対応製品を組み入れることが可能になります。最近ではパーソナル・ミキシング・システムやワイヤレス・レシーバーなど、多くのDante対応製品が登場していますが、そういった機器をそのまま接続できるというわけですね。DNT-192は1台のStage 64に最大6枚装着することができるため、Dante経由で最大64ch入力/32ch出力もの大規模な入出力に対応することができます。

その他、E6L-192はHDX-192の最大装着枚数が2枚から4枚に増加し、オフライン作業用のVENUE Softwareのスタンドアローン版も利用可能になるなど、v5.2の機能強化のポイントは非常に多岐に渡っています。

——— DNT-192によるDante対応は、多くのPAカンパニーに喜ばれそうです。Avidとしては特にAVBにこだわっているわけではないということでしょうか。

RS おっしゃるとおりです。VENUE | S6LシステムやVENUE | S3LシステムではAVBが基盤になっていますが、我々はこの規格にこだわっているわけではありません。Danteに限らず、必要に応じて様々な規格をサポートしていく予定です。例えば今年から来年にかけて、MADIに対応したMADI-192や、Thunderboltに対応したTBT-192といったオプション・カードを発売することが決まっています。

たまになぜDanteではなくAVBを採用したのかと訊かれますが、その理由はシンプルで、AVBはIEEEに準拠したオープン・スタンダードな規格だからです。すべての技術情報は公開され、採用にあたってライセンス料などもかかりません。一方、DanteはAudinateという会社が権利を有している規格であり、すべての技術情報が公開されているわけではないのです。そういった規格をコンソールの基盤となる部分に採用するのは、メーカーとしては大きなリスクです。万が一トラブルが生じた際、我々だけの力ですべてが解決できる保証はありません。ですから基盤となる部分ではオープン・スタンダードのAVBを採用し、その上でDanteにも対応するというスタンスを取ったのです。

——— レコーディング/プロダクションの世界では、定番となっているプラグインが存在します。欧米のVENUEユーザーの間で特に人気のあるプラグインがあればおしえてください。

RS 最初に追加するプラグインとして、最近はAvidのProシリーズが人気が高いですね。Pro CompressorPro ExpanderPro LimiterPro Multiband DynamicsPro Subharmonicといったプラグインですね。これらはSystem-5のプロセッシングを元に開発されたプラグインで、音質的なクオリティが非常に高いのに加えて、機能的にも十分です。Pro Compressorなどは、WavesのC4などと同じように機能します。

サード・パーティー製で特に人気があるのは、Sonnox、McDSP、Fluxといったところでしょうか。特にSonnoxのOxford Reverbはかなり人気があります。あのプラグインは、ライブ・ミックスの定番と言ってもいいかもしれませんね。

——— VENUE | D-ShowシステムやVENUE | ProfileシステムはTDMに対応していたため、WavesのプラグインをDSP上で使用することができました。しかしながらWavesはAAX DSPをサポートしていないため、VENUE | S6Lシステムでは同社のプラグインをDSP上で使用することができません。Wavesプラグインの対応についておしえてください。

RS Wavesとは昨年末、ライブ用プラグインの共同開発に関する契約を締結しました。おっしゃるとおり彼らはAAX DSPをサポートしない方針のため、VENUE | S6LシステムにAVBあるいはMADI経由でSoundGridサーバーを接続した形での対応となります。我々は現在、E6L用のSoundGrid対応オプション・カードを開発しているところです。最終的にはVENUE | S6Lシステムのタッチ・スクリーン上でWavesのプラグインをコントロールできるレベルまで両者を統合できればと考えています。

——— VENUE | S6Lシステムでは、DSPベースのHDXエンジンとCPUベースのRTXエンジンを組み合わせたハイブリッド・アーキテクチャーが採用されています。将来的にRTXエンジン上でAAX Nativeプラグインを使用できるようにはなりませんか?

RS レーテンシーや処理能力のことを考えると、プラグインはDSP上で動作させるのがベストだと思っています。しかしRTXエンジン上でプラグインを動作させるのは技術的にはそれほど難しくはありませんし、世の中にはAAX Nativeにしか対応していないプラグインも存在するわけですから、可能性としてはゼロではありません。

——— Pro Toolsには、アナログ・コンソールのサチュレーションをミキサーに付加するHEATというオプションが用意されています。HEATVENUE | S6Lシステム対応についてはいかがですか?

RS 検討しているところです。似たようなオプションとしては、プリアンプ・イミュレーション機能の搭載も考えています。

——— 最後にVENUE Softwareの今後のアップデート予定についておしえてください。

RS 今後も四半期ごとにアップデートする予定で、様々な機能の追加を予定しています。例えばグラフィックEQのフェーダー操作や、AVB-192オプション・カードの対応枚数の増加、それとVENUE | S3L-XシステムのI/OラックであるStage 16がVENUE | S6Lシステムでも使用できるようになる予定です。北米のPAカンパニーは、VENUE | S6LシステムとVENUE | S3L-Xシステムの両方を所有している会社が多いので、これによりシステム構築の柔軟性が向上するはずです。またVENUE Software v6.0からは、Pro Tools Softwareと同じようなライセンス方式を採用する予定になっています。

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